コワーキングスペースやノマドワーク中、iPod などで音楽を聴きながらお仕事されているコワーカーの皆さんも多いのではないでしょうか?
そんな皆様のために是非お薦めしたい1曲をご紹介していきたいと思います。名付けて
「コワーカーのための名曲アルバム」 ^^;
何だかダサい連載名ではありますが、是非ともお付き合いいただけますよう宜しくお願い致します m(_ _)m
記念すべき vol.1 でご紹介するのは、シューマンの交響曲第3番「ライン」です。
かつて、池辺晋一郎さんが出演されていた頃の「N響アワー」のオープニングでも流れていた曲。「ライン」という副題はシューマン自身によるものではありませんが、ライン地方の明るい雰囲気や雄大な自然そして牧歌的な情緒が盛り込まれたシューマンを代表する明るく美しい名曲です。
明るい曲調とは裏腹に、この時代のシューマンは決して「順風満帆」というわけではありませんでした。
この頃既に彼は精神疾患の兆候を自覚しており、内向的な性格も相まって音楽監督を務めていたデュッセルドルフのオケの楽団員とも上手くいっていなかったようです。
ライン地方の風光明媚な風土から「ライン」のような明朗なインスピレーションを感じ取れる感性を持ちながらも、深い孤独に没入していくシューマンの姿を想うと、勇壮で希望に満ちた第1主題が何故かとても切なく聴こえてしまいます。
貴族や司教に宮仕えすることが当たり前だったバッハやモーツァルトなどの古典派時代の作曲家とは違い、ベートーヴェン以降の作曲家の多くは「フリー」として活動していました。そのため、多くの作曲家は一人孤独に創作に取り組み、出来上がった作品を「献呈」という形でアピールしてスポンサーを得るという「マネタイズ」が一般的だったようです。シューマンも例外ではなく、結果として「フリーのアーティスト」というワークスタイルが孤独を更に深め、やがては精神の破綻とそれによる早すぎる死をもたらしてしまいました。
ただ、シューマンが孤独の淵へと沈んでいく自分を無策に受け入れていたわけではありません。優れた論評力と高い知性を活かして積極的に評論を執筆し、それを通じて自身のメッセージと新しい才能への賛美を社会に発信していました。その活動こそが、彼と社会とを繋ぐ重要なコミュニケーションパスだったのです。そして、その努力はロマン派音楽の新しい地平を開くことに繋がりました。ともすると作曲家としての活動ばかりが大きく取り上げられるシューマンですが、評論家&インキュベーターとしての功績はとても偉大なものだったのです。
一番有名な逸話は、ショパンを紹介する評論中の賛辞「諸君、脱帽したまえ、天才だ!」でしょうか。シューマンがいなかったらショパンは歴史の雑踏の中に埋もれたままだったかもしれませんね。また、当時はバイオリニストのピアノ伴奏家として細々活動をしていたブラームスを発掘し、大作曲家としての道を開いたことも忘れてはなりません。まさに、ドイツロマン派を築き上げた「スーパーインキュベーター」だったのです。
あれ? そんな話ってどこかで聞いたことがあるような…当ブログの読者ならそう思われる方も多いはず。そうです、現在コワーキング界で起こっているムーブメントとまさに同じなのです。そう思うと、もしあの時代に「コワーキング」というワークスタイルがあったなら、シューマンは孤独から抜け出し、新たな人生を謳歌して素晴らしい作品を残してくれたんじゃないかしら…と思ったりもする今日この頃です。