本田直之さんの『あたらしい働き方』を読んでいます。その中でコワーキングに通じるオフィスの面白いあり方について書かれていたので紹介します。

壁をなくし、他人に見られていると倫理的になる(pp188-191)

一般的なオフィス家具を買い揃え、一般的なレイアウトにすることで、それらが持つ型のようなものにはまってしまうのではないかと書かれています。本田さんは「あたらしい働き方」をしている会社のほとんどが、オフィス什器をオリジナルで作っていたことに気づき、こうした考えに至ったようです。

僕がPAX Coworkingを作るときにも、漠然と“アンチ一般的なオフィス”と考えていました。通常の作業は一人ひとりの境目のない大きなテーブルで、打合せスペースは丸テーブルで、立って会議できる環境も必要かな・・・などなどです。

環境は人を変え、アイデアを変えるので、一般的な空間を作るとそこから抜け出すのは難しそうですよね。

この節に出てくるチームラボという会社の例が書かれていました。取材をしているすぐ横で面接が行われていたそうです。ミーティングの中で出てきた言葉に引かれて誰かが意見をすることも。コワーキングスペースがいい状態で運営されているときに起こることと全く同じですね。

ルールがほとんどない中でも、壁を取り払い、他人に見られている状況を作ると大きな抑止力となり、倫理観が保たれるということには、完全に同意します。

コワーキングという言葉を知る前に、漠然と今でいう“パーティするように仕事するオフィス”のことを考えていました。たくさんのシェアオフィスにスパイとして潜り込んだり、アポを取って話を聞いたりしましたが、「いろいろな人が出入りするので(小さい)窃盗に注意すべき」という声が支配的でした。そのためにしっかりとしたルールを策定し、問題のある人を排除する仕組みづくりも欠かせないとアドバイスをくれる人もいました。

しかし、僕はそれにすごく違和感を感じました。そういうつもりで運営していては、“パーティするように仕事する”ことはできないのではないか。ちょうどそう思っているときに、コワーキングのメーリングリストでルールに関する議論をしていて、ルールを作らない方針のスペースやルールをA4一枚以下にまとめるのがいいという意見があり、同志に勇気づけられました。また、僕にとっては会社員時代に会社の同僚や先輩との飲み会に外部の人を呼んだ経験や、パクチーハウス東京で楽しんでくれているお客さんの笑顔から、壁を作らないことの価値を学んでいたので、今のようなスタイルに決めました。

佐谷恭の「パクチー起業論」より