PAX Sunday担当の佐谷恭です。

土曜日の朝から広島に行き、友人の結婚式・披露宴・二次会に出席。一泊して帰ってきました。20時間の滞在中に、結婚式を含め8軒の飲食店を訪れ、計20kmランニングしたので充実のときでしたが、なぜか土曜日のカウントを忘れていて、今日が日曜日ということを、PAX Coworkingのメンバーからの指摘でようやく気づきました。

今回、当初の目的であった結婚式に加えて、突然予想もしない知人とFacebookで連絡が取れ、文字通り寝る間も惜しんで広島を満喫してきました。たくさんの場所を訪れたことで、ある一つのことに気づきました。

それは。

未完成のものに触れる価値

結婚式と披露宴は、広島でも超メジャーなホテルで行われました。明るく天井の高いチャペル、おそらく広島で最も見晴らしのよい景色。完成度の高い料理とサービス。完璧さが前提だからこそ、ちょっとした綻びがネガティブな印象を産んでしまいますが、総体としてきちんと組み立てられていて、すべてのことがアタリマエのものとして進行していきます。隙はありません。

一方で結婚式の前に小腹が空いたので行ったさぬきうどん屋さんは、レジ店員が値段を憶えていないので、お客さんが来るたびに大きな声で他のスタッフに値段を確認していたし、複数のものを注文すると計算ができないようで、その度にお客さんが○○円ですよと自ら計算して支払っていました。

また、夜中に訪れた汁なし担々麺屋さんは、元々屋台を引いていた人が出した店で、厨房のサイズと設備がアンバランスでした。茹でる前の麺を入れた網を予想外のところにひっかけたり、積み上げられた荷物を見上げるお客さんに「内装工事も素人仕事だから、崩れて頭に当たったらゴメンなさいねー」と悪びれずに言っていました。お客さん大笑い。店主が狭い厨房で身動きが取れないので、ドンブリの片付けや席の譲り合いをお客さん同士が自発的に、協力してやりました。

隙のないホテルと隙のありすぎる飲食店。どちらが絶対的にいい悪いということはありませんが、後者にいるときに、その店の状況に関することに留まらず、頭がフル回転するのを感じました。

隙のないホテルは、余計なことを考えさせない空間なので、周りにいる参列客や友人との会話に集中できます。隙のある場所は、何かに集中できる環境ではないです。しかし、そこには必然的にコミュニケーションが生まれざるを得ない環境があり、店のスタッフやほかのお客さんと予想以上に関わることになります。それが面白いかどうかは人によるのかもしれませんが、そうした人との関わりだけでなく、情報や刺激が常に入ってくる空間なので、自分が忘れていたことや放置していることなどをいろいろ思い出す結果にもなりました。

帰りの新幹線は、東京駅までのチケットを購入したのですが、ふと思い立って新横浜で下車しました。センター南に先月オープンした、ハタケトという発酵料理専門カフェに立ち寄ってみました。

できたばかりで、まだオペレーションも慣れていないと言っていました。店主の入海さんは「完成していないこと」を随分気にしていましたが、僕は広島での経験も踏まえて、常に前進していくために、ゴールを安易に決めない方がいいのではないかと思いました。こだわりの専門店ですので、常に進化しつつこだわりの発信をしまくるのは絶対的に必要だと思いますが、特殊な空間にいるからこそその空間に隙を残すことで、訪れた人が店の予想をはるかに超えるような発想をしてくれるかもしれません。さらに、その発想をそのまま行動に移すような仕掛けがあるとなおよいでしょう。

未完成のものは、人に刺激を与えると思います。考えたり、補おうとする気持ちにさせることで、空間をより自由に使うことをお客さんに起こさせるのです。大資本のシェアオフィスで居心地の悪さを感じるのは、そこに自由な雰囲気がなく自分の意志を反映させにくいからかもしれません。

PAX Coworkingは未完成でありたい。来訪者が空間を作って行く余地を常に残しておきたいと考えています。