旅と平和の佐谷恭です。メンバーブログも一巡し、2周目に入りました。

昨日息子が5歳になりました。とても個人的な話ですが、息子の誕生は僕の起業にとってとても重要な要素なので、このネタからブログを書きます。

息子が生まれると分かったとき、自分が父になるということがどういうことか全く分かりませんでした。自分の父のことは、物心ついたときからずっと「お父さん」だと思っていましたが(当たり前ですが)自分がそんな存在になれるのかと心配でした。結局は、息子がいろいろと接してくることで、父親らしくしてくれる(と思う)のですが…。

僕が自分で事業をしようと思ったのは「息子と同じように、同じぐらい成長したい」と思ったからです。また、自分がそれまでしてきたことをきちんと生かして社会に還元することが、息子に見せる背中としてふさわしいと思ったからです。それ以前にも起業をしようかと会社を辞めたりしたことはありましたが、燃え上がるようなパッションが沸き起こらず、実現はなりませんでした。

息子が生まれた後の生活は想像もつかなかったので、妻と2人の落ち着いた時間を楽しむべく、フィンランドへ行きました。2006年秋のことでした。妊娠している状態だったので、衛生状態がよく(暑いところより涼しいところへ)フライトが10時間以内のところということで、行き先として急浮上したのがフィンランドでした。

フィンランドは英語も通じるし、必要なものはすべて日本と同じように手に入るし、街を歩いて全く不自由がありませんでした。それまでに約50カ国を訪れたことのある僕にとっては、フィンランドの旅の難易度はかなり低いほうでした。でも、あちこちの店や観光地を訪れ、ヘルシンキでの日常を楽しんでいたある瞬間に、僕の心の中に大きな変化が訪れました。

それは、目の前に広がる世界に突然感じた違和感でした。「日本と同じように」過ごせるのは間違いないのだけど、そこにある椅子の高さ、柱の形、メニューのデザイン、周囲の雑音などがいちいち違うことに改めて気づいたのでした。長い旅をしている途中で、見るものに飽きてしまったり、なんとなく好奇心を失ったりしたことは何度かありましたが、そんなときの風景が一つひとつ思い出され、「こんなに貴重な経験をしているのに、それを活かさないのはアホだ」と思いました。

「子どもと一緒に成長」という漠然と思いついていたキーワードとこのときの感覚があいまって、旅で出会った一瞬を輸入するということを思いつきました。国境を超える人の動きが始まって以来、モノを運ぶ商売は存在してきました。またこの数十年で、ホテルやレストランなどのサービスの輸入も増えています。しかし、どちらも日本に合うものを選ぶか、日本に合わせる形で入れているパターンが多いので、カスタマイズしない“ある瞬間”をそのまま日本に持ってきたら面白いんじゃないかと思いました。僕を驚かせ、感激させた一瞬一瞬をです。

商品、サービスの輸入に加えて、僕はこれをコンセプトの輸入と称することにしました。

直後にテーマを「旅と平和」に設定し、事業内容をあれやこれや考えて、半年後にやっと思いついた「paxi house tokyo」を最初の事業にしました。息子はパクチーハウスの床をハイハイし、落ちている根を拾ってしゃぶり、育っていきました。息子が1歳になった直後ぐらいに、パクチーハウスはロイター通信に取材を受け、海外で少し広まるとともに、その邦訳がYahoo! Japanのトップページのトップに掲載されたことで最初に知名度を飛躍的にあげました。

その後、店内を工夫したり“交流する飲食店”のコンセプトを水平展開(「鳥獣giga」という業態を開き、半年で閉店)したり、パクチーハウスで起こる交流をオフィスに展開した「PAX Coworking」を立ち上げたりしました。起業前には全くなかった構想ですし、まだ形として完成をしたわけではないですが、元々ある自分のテーマに事業の流れを加味した結果できたもので、非常にエキサイティングな時間を過ごしています。

さて、息子が5歳になりました。息子が5歳になったら・・・と決めていたことが一つだけあって、それは彼をインドに連れて行くこと。これまで彼を連れて何度か旅をしていますが、インドは僕の好きな国の一つであり、記憶が残る頃にインドには連れて行きたいと思うからです。タイミングよく、昨年末から兄家族がインドへ赴任したりして、いろいろな条件は整ってきたみたいです。

家族のために時間を確保することすら、まだ満足にできていないのですが、この一年以内に、息子をインドに連れて行くという目標は達成させたいと思っています。