少し前に船橋屋のくず餅を買ってきた時に娘とこんな会話をした。

(僕)「このお店って200年以上続いているんだよ」

(娘)「200年って一代40年だとしても五代以上だよ」

と小学生の娘も驚くほど200年は長い。そんな200年以上の歴史を持つ企業にフォーカスを当てて日経新聞には「200年企業」として連載されている。この本はその連載を再編集したものになります。その名も『200年企業』。今週もBookbiz Wednesday担当の大塚がお届けします。


"200年企業 (日経ビジネス人文庫 ブルー に 1-36)" (日本経済新聞社)

■200年はとてつもなく長い

この本の「はじめに」を読むとこう書かれている。

日本は歴史の長い企業が世界の国・地域のなかでも突出して多い。ファミリービジネスに詳しい後藤俊夫・光産業創成大学院大学(静岡県浜松市)教授の08年4月時点の調査では、日本には創業200年以上の企業が3113社と世界で最も多い。2位のドイツ(1563社)、3位のフランス(331社)、4位の英国(315社)などを大きく引き離している。

何となく不思議な気がしませんか?今、どこの書店のビジネス書コーナーを覗いても海外の先行事例という感じで翻訳本が幅を利かせています。でも、日本の歴史ある企業に学ぶべきものがあるのではないか、という観点からこの連載が始まったようだ。ちなみに、数年前までは飛ぶ鳥を落とす勢い、今は青息吐息なシャープは1912年9月創立なので100年である(関係ないが、Googleで「シャープ 創業」と入れたらトップに答えを返してくれた。さすがGoogle)。つまり、200年という時間は生半可な時間ではないことが理解できるだろう。

連載とは別に「本」の体裁にする際に再編集している良い点として時系列ではなく、テーマ別に読み進められる点である。それらのテーマが章立てになっていて、いくつか紹介すると、

  • 壊して創る物語 — 経営者はひるまず挑む(第一章)
  • ヒトこそ資産 — 育てて価値を作る(第四章)
  • コアに専心 — 妥協しない(第七章)

などがあり、第十章まで続く。

実はどの企業の話を読んでも所謂「勝ちパターン」というのが存在しない。代々創業家が支えてきた企業もあれば、早い段階から創業家と事業は別の形でバランス良くまわしてきている企業もある。また変化をせずに継続しているケースもあれば、変化し続けながら今に至っているケースもある。ついつい答えを探そうとしてしまいがちであるが、「企業経営に答えはない」ということだろう。しかしこれだけはきっと感じるはず。「老舗」というと、「堅い」や「保守的」、「変化を嫌う」というイメージだが、逆に思考が柔軟で変化を厭わない(変化することを恐れないで結果的に変化しなかった、という意味もある)企業だからこそ今に続いている、と。

■「良い会社」って何だろう

「アベノミクス」と騒がれだしてから為替は円安に、株価は上昇、お陰で各社の決算書はピカピカになり、何となく景気が上向いている雰囲気になっている。でも、本当にそうなのかな、と感じているのは僕だけではないでしょう。決算は1年間のその企業の成績表なので、どうしても1年間で結果を出そうとする思考になってしまいます。そう考えると「良い会社」の定義って難しいですよね。僕の中では逆にシンプルに考えていて、長く続いている企業(あるいは組織)は「良い会社」だと思っています。だって、文化が継承されない限り(事業が長い間一緒とは限らない)会社として継続できないわけですから。

この「200年企業」の連載は今も続いており、本には「Ⅲ」まで発行されています。新聞上で時々読んでいる人も再編成された形で読み返すと非常に分かりやすいですよ。