二週連続で電子書籍について書いてしまったので今週はちゃんと本を紹介しますよ。ちょうど3年前の本ですが今でも全然褪せていないというか(今は完全版という形で新しいバージョンが出ています)、仕事に対する考え方を見つめ直す意味でも良いたたき台の一冊です。ということで、今週もBookbiz Wednesday担当の大塚がお届けします。
"小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則" (ジェイソン・フリード, デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)
■仕事ってなんだろう
実は高校生ぐらいの時から漠然と「仕事ってなんだろう」って考えていた節があって、大学に入る時も専門的な勉強がしたかった訳ではなく、4年間という時間が欲しかった、というのが本音でした(結果的に5年利用したのですが)。とくかく4年間という時間を利用していろいろな仕事(実際にはバイトという形で)を経験してみたかったんですよね。まあ、実際にはそれぞれがそれなりの期間同じ仕事をすることになり、結果的には多くの種類を経験できませんでしたが、2年半ぐらい携わっていた洋服の販売員の仕事は結構本気でやっていたと思います。基本的には土日祭日、特別な時期だけでしたが、自分自身のお客さんもいましたし、次のシーズンの展開に関して意見も言っていました。ああ、そうそう当時の売場で、一日の最高販売レコードも作りました。だから、最初の会社の先輩と入社前に話をしていた時にも自信があったんですが、その先輩からは「でも所詮アマチュアだよね」と一蹴された記憶が今でもはっきりと覚えています。
いけないいけない本の話だ。著者は37シグナルズのCEOとプログラマで、「ベースキャンプ」というWebアプリケーションで有名な会社の人たちです。原文がしっかりしているのか、この日本語訳の本書もかなりストレートな感じの文章になっています。例えば、
すごい製品やサービスを生み出す最も単純な方法は、あなたが使いたいものを作ることだ。自分の知っているものをデザインするのなら、作っているものがいいかどうかすぐに判断がつく。僕たちに必要なものを作ったまでだ。
別にみんながみんなプログラマではないし、作り手ではないけど、たとえ販売やサポートの立場であってもその製品やサービスを使っていない人ってすぐに分かりますよね。結構「グサッ」ってなった人も多いのではないでしょうか。そういう人は「自分は何が好きなのか」って自問自答した方がいいですよ。ちなみに僕はコンサルティングの仕事をしていますが、自分で利用者の立場にならないと自分の言葉にならないので基本的に実際の製品を買ったり、サービスを利用していたりします。そのため、好きなものしか仕事にできない、という側面がありますが….(苦笑)
■世の中の常識と反対なところが多い
実はこの本の中には世の中の常識と正反対のことが多く登場します。その一つとして、『「失敗から学ぶこと」は過大評価されている』というパートがあり、こんなパラグラフがあります。
失敗は成功の源ではない。ハーヴァード・ビジネススクールのある調査によると、一度成功した起業家は次もうんと成功しやすい(次に成功する確率は34パーセント)。しかし、最初に失敗した起業家が次に成功する確率は、はじめて起業する人と同じたったの23パーセントだ。一度失敗している人は、何もしなかった人と同じぐらいにしか成功を収めていない。成功だけが本当の価値がある体験なのだ。
どうです、なかなか鋭いでしょう。
僕のお気に入りのパートは『マーケティングは部署ではない』というところがあり、こう書かれています。
あなたの会社にマーケティング部署はあるだろうか?もしないなら、いいことだ。もしあるのなら、彼らだけがマーケティングの責任を負うべきだと思わないことだ。経理は部署だが、マーケティングはそうではない。マーケティングは、会社の皆が行うものである。
いや〜本当にそうですね。
こんな感じの話が続くので楽しみながら読み進められる上、自分自身を振り返る良いきっかけを与えてくれます。業界や部署に関係なく、会社員でも自分のビジネスをしている人でも参考になる部分が多々あると思います。新年度を迎えるにあたって仕事の棚卸しをしてみませんか?