今朝の東京は予報から数時間遅れで雪になり、かなり早めに家を出たにもかかわらず人身事故が原因で山手線が止まり、結局ミーティングには遅刻してしまいました。たまたま他の交通手段がない場所だったので、予防線をはったのに今ひとつ活かされなかったスタートでした。今週はそんな時でも腐さずに前を見るべき、という気持ちにさせてくれる一冊を紹介します。Bookbiz Wednesday担当の大塚が今週もお届けします。

■ていねいな仕事って

今週の一冊は松浦弥太郎さんの『今日もていねいに』です。


“今日もていねいに。” (松浦 弥太郎)

ご存じの方も多いと思いますが、著者の松浦弥太郎さんは雑誌「暮らしの手帖」の編集長であり、中目黒にあるCOW BOOKSのオーナーでもあります。タイトルの「ていねいに」に掛かる言葉は「生きる」なんですが、「仕事」に置き換えても十分に心に染みる内容になっています。う~ん、内容というとちょっと違うかも知れませんが、文体と着眼点、そして行動と言い換えた方がいいでしょうか。

実は僕自身が松浦弥太郎さんファンでもあるので、彼の本はほぼほぼ完読しています。彼の文章は一本筋が通っていて、そう「背骨がしっかりした文章」と言えると思います。とにかくぶれません。そして、自分ではなく、「相手」があった上での自分、という立ち位置で物事を見つめ、行動しています。

ではこの考え方を「仕事」にポイントを置いて考えてみましょう。

僕自身の仕事は製造業でもないし、職人でもないので、なにか「モノづくり」の上でのていねいさはありません。が、こうして文章を書く時でも、相手とブレストする時でも「ここでいいや」とか、「こんなもんだろう」という気持ちが生まれた時点でていねいさは失われていると思います。算数に検算があるように、文章や会話の中にも相手の立場は考えて(空気を読むのとはちょっと違います)書いたり、話したりすることで出来上がりは全く違うものになると思っています。こんな気持ちで仕事に向き合うべき、と思わせてくれたのがこの本なんです。

■「覚悟を決める」ということ

少し内容から紹介させてもらうと、僕が好きなエピソードに『凛とした誠実』という話があります。この中では何かしらの答えを出すには「覚悟」と「情熱」が必要と松浦さんは書かれています。答えてあげることが誠実なのではなく、相手のことを信頼し、理解した上でなければ答えない姿勢。

覚悟を決めたのなら、最後まで付き合うべきだということでしょう。身の周りに、自分で受けた仕事にも愚痴をこぼしている人はいませんか。それはきっと「ていねい」とは反対の状態ですね。

■「ていねい」は「美しい」

『静かなしぐさ』というエピソードも素敵ですよ。ちょっとした仕草が美しく映る場合と見にくく見える場合があるという例を自動改札にタッチする姿を例に書かれています。仕事で会議室から出る時にイスをきれい揃えることも一緒だと思います。常識とか礼儀という側面もありますが、次に使う人に気持ちよく使ってもらいたい、という気持ちで行動すれば自然とすべきことが決まってきますよね。

この本に出会ってから、『ていねいな仕事は相手を心地よくしてくれる』と思って仕事をしています。ちょっと興味が湧いた人は是非読んでみてください。きっと仕事に向き合う気持ちが変わると思いますよ。