今週は前説なしでいきます。

今週もBookbiz Wednesday担当の大塚が案内します。

 


"グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ" (スティーブン・レヴィ)

■一日のほとんどはGoogleとともに

朝起きてからメールをチェックする。プライベートはもちろん、仕事用のメールもAppsなのでGoogle。仕事をしながら何かを調べようとブラウザを立ち上げればデフォルトページはGoogleだ。そのブラウザさえもChromeなのでGoogle製。場所を確認するための地図はGoogle Map、気分転換に音楽や映像を見ようと思ったらYouTubeを見ることになり、多くの人はGoogleにお世話になっているレベルを超えて支配されている感じじゃないかな(もしあなたのケータイがAndroidだったらもっとだね)。

一方で、それだけGoogleに接触しているにもかかわらず、Googleの内部事情に関してはほとんど公開されていない。新サービスのニュースや開発中のプロダクトの記事はたくさん目にするかも知れないけど、内部情報に関してはApple以上に秘密主義を貫いている。そうした中で、この本は貴重な、Googleの裏側を知る一冊に仕上がっている。それも、インタビューを通してまとめられているので、「人」にフォーカスしている。Googleという会社だけではなく、奇抜な天才が始めた組織がどんな風に細胞分裂し続けているのかを見ていくとまた違って感じで見えるから面白い。結局、組織は「人」なんだ、ということが改めて理解できる。

 

本書の序盤にインドのバンガロールで現地のグーグラーとのミーティング(注:2007年の取材と思われる)にこんな質問を受ける。

「製品化へのロードマップについてはわかりました。でも、収益化へのロードマップはどうなっているのですか?」

それに対して、

「そういう考え方をしてはいけない」

「私たちは、ユーザのことだけを考えればいいんです。ユーザが満足してくれれば、収益は後からついてくるのです」

と答えている。こう答えたのはマリッサ・メイヤーで、現在は米国YahooのCEOである。常に「Googleっぽい」、つまり「Googleらしさ」という無形の意識のアジャストをしているシーンが度々出てくる。
二人の天才は幼少期に「モンテッソーリ教育」を受けていること、これがGoogleの規範の原点な気がする。そして「邪悪になるな」がすべての行動の原点になっている。

■Googleでも失敗はある

そしてこの本の醍醐味はGoogleの成功部分だけではなく、中国進出での失敗を詳細に書かれている点である。報道されているような表面的な表現ではなく、内側の事情をまるでライブ映像を見ているかのような感じで伝えてくれる。そして、「権威に対して疑ってかかれ」という思想で築き上げてきたGoogleは今や「権威」以上の存在になってしまっている。でも、規模ではなく、思想は創業当初と変わらないのだろう。でなければ、ユーザが存在するサービスの中止を平気で実行しないだろう。

Googleはユーザから見ても「大企業だから・・・」という甘えが通じない組織かも知れない。一日の多くの時間を預けている相手だからこそ、もっとGoogleを知った方がいい。ということで、この本は電子書籍で読んだんだけど、紙の本も買うことにしよう。それぐらいのレベルの内容です。