"「超」入門 微分積分 (ブルーバックス)" (神永 正博)
皆さん、学生時代数学は得意でしたか?
僕は中学卒業まで(正確には高校初期まで)は算数/数学は「大」が付くぐらい得意科目で、それこそ数学の問題を解くことはクイズを解くことと同義な感覚でした。でも、高校で文系を選択したので記憶の中に微分/積分の記憶がないんですよね。もしかしたら授業はちゃんと存在していたのかも知れないけど、全く残っていない。そんなこともあり、「ちょっと数学を復習してみよう」という気持ちになって最近購入して読んだ本が今日紹介する『「超」入門 微分積分』です。数学が不得手な人でも読み物として読み進められるのでちょっとチャレンジしてみてはどうでしょうか。
今週もBookbiz Wednesday担当の大塚が案内しますね。
■教科書が必ずしも正しい進め方ではない
まずこの本の特徴は教科書とは逆に「積分」から勉強します。実はこれだけで数学嫌いを大量生産しなくて済む気がします。よく「難しい数学なんて世の中を生きていく上で必要ないだろう」と言われる人が結構な割合でいますが、「積分」の公式を使うシーンはほとんどないでしょう。でも、「積分」の考え方(「微分」もそうですが)を知っているかどうかでモノの見方の幅は全然違ってくると思っています。そう、数学はそういう考え方というか思考方法を学ぶものであって、公式を覚えて答えを出すことがゴールではないんですよね。
話が逸れました。ちゃんと本の話をしますね。この本では「積分」を説明するために「長方形」をベースに考える、という視点に立っています。正方形は長方形の一部(集合的に考えるとそうですよね)、長方形を対角線で切れば直角三角形、変形させれば平行四辺形、台形と長方形の特徴やルール(定理)からそれぞれのルールを導き出すことができることをまず説明しています。まあ、この辺は数学の証明問題と一緒なんですが。そしていよいよ積分に近くなってくるんですが、円の面積を計算しようとした時に細長い長方形の集合体と考え、その長方形の幅を極限まで細くする、と、円の面積と長方形の集合体の面積が非常に近くなる。ここで「近似」という考え方が生まれ、実際に幅を狭めていくとどれぐらい円の面積に近づくか検証しています。少し意識が遠のきつつありますか?
この本は急いで読む必要はありませんので、ゆっくり読めるところから読んでみてください。
もう一つ「積分」のところで興味深かったのは「カヴァリエリの原理」からいきなり立体の体積に行かず、一度、関数のグラフで分かりやすい解説をした上で体積を求める公式を「カヴァリエリの原理」の用いて照明しているところ。実はここがポイントで、「カヴァリエリの原理」が言えれば目の前の課題を違うものに置き換えて証明ができる点。ビジネスの世界でも同じようなシーンがありませんか?目の前の課題を紐解こうとすると難しいんだけど、他のものであれば説明がしやすいケースのような。
■微分から何を学ぶか
「積分」に比べると「微分」はなかなかイメージしにくい。多くの人は実生活でもビジネスの世界でも「微分」を使って計算することはほとんどないでしょう。それよりも、「細かい部分を無視して変化する部分を捉える」という思考を吸収した方が余程役に立つだろう。そう「近似」ですね。僕は普段「肌感覚」って言っていますが。
■最後に
本当はここが一番大事なんです。
学生時代の参考書ではないので、知識を得るために本を読むのではなく、復習しながら「どう今の生活やビジネスに応用できるか」を意識して読む。上の文章の量を見てください。「積分」に比べて「微分」の量が少ないでしょう。僕にとっては「積分」の方が実生活に密着しているし、ビジネスで使える感覚があったから。
こんな感覚で読むと微分/積分も楽ですよ。