今週は本の紹介もありますが、少し違った目線から本について書いてみたいと思います。引き続き大塚がBookbiz Wednesday担当としてご案内します。

■「コミュニケーションツール」としての使われ方

まず書店に足を踏み入れた時、どこに向かいますか?

目的の本がある場合にはその本のジャンルの棚に向かうでしょうが、特に目的もなく書店に立ち寄った際にはきっと新刊や話題の本の平台に向かい人が多いのではないでしょうか。最近では多くの書店が平台にPOPを並べて、「xxx新聞の書評に取り上げられた」や「xxxTVで紹介された」などの宣伝調のものから「最後はきっと泣けます!」という書店員さんの生の声のようなものまで乱立しているお店まであります(僕はPOP否定派なんですが。その話はまた別の機会にしましょう)。そこで皆さんの頭の中か心の中ではいろいろな感情が交錯していることでしょう。そして意外と『最近何かと話題になっているから読んでみよう』という種類の本はそのままレジに持っていくケースがあるのではないでしょうか。ちょっと前の本ですが、この本を買った人は多いんじゃないでしょうか。

“フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略” (クリス・アンダーソン)

でも、今ここで冷静に考えてみてください。

あなたの仕事はこのようなビジネスモデルでしょうか。あるいはこんな形のビジネスに変更可能でしょうか。立場がビジネスを決める立場か、または所属がマーケティングやビジネス開発でしょうか。実際には該当する人はほんの僅かでしょう。でも、多くの人が読んでいるでしょうし、その後の雑誌やウェブ上でも「フリーミアム」という言葉は流行語的な位置付けになりました。

そうつまり、本から新しい知識を得ようとするアプローチの他に

コミュニケーションツールとしての本

という使われ方がある、ということを再認識して欲しいと思います。古くはこんな本や

“ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か” (エリヤフ・ゴールドラット)

こんな本もありますね。

“7つの習慣―成功には原則があった!” (スティーブン・R. コヴィー)

要は同じ本を読んでいることで、ある一定の知識や考え方を理解しているため会話が成立し、議論ができるようになります。これを意図的に行っているのが「読書会」になります。

■流されずに読書(に限らず)を楽しむには

さて前説はこんなところで、せっかく僕のエントリーを楽しみにしている方が何名かいることを知っているので、「コミュニケーションツールとしての本」(ある意味で受け身的な読書)ではなく、「プロアクティブな読書」を目指すにはどうしたらいいか、という問いに対する解を提示しましょう。これです。

“情報の「目利き」になる!―メディア・リテラシーを高めるQ&A (ちくま新書)” (日垣 隆)

ちょっと毒と紙一重なので、ゆっくりでいいですから租借しながら自分のものに(平たくいえば、腑に落ちるまで)なるまで丁寧に読んでください。少しだけ毒な部分を見せますね。

(出会い系に対する印象を聞かれ、その回答する中で)

「顔を合わせたこともないから親しくなれるわけがない」のではなく、「顔を合わせたこともないからこそ親しくなれる」という現象が広がっている。これを拒絶感のみで切り捨てるのは浅薄にすぎる。顔と容姿からほとんどの好感度印象を読み取っていた時代のほうが、一方的で偏見に満ちていたのかもしれないではないか。

こんどはまともな方を。

リテラシーの第一歩は、「知る」ということから始まります。知ることによって、それまで見えなかったものが見えてくるようになるわけです。ただし、どこかに書いてあることや教えられたことをそのまま覚えるのとは違って、以上の指摘は私の「観察」によって「検証」に耐えたものです。

どうですこれは深いでしょ。新しいことを聞いて『知る』だけではなく、『検証』して自分のものにする、というところが大きい。この本が書かれた時代よりもネットの情報量は増え、検索エンジンの精度が上がったため、ネットを検索して分かったつもりになってしまうことが多い中、『観察』(じっくり見るだけではなく、いろいろな角度から見る)し、『検証』する。

この本を理解した後は周りを見る目が変わりますよ。それがたった700円で得られるなら読まない手はないでしょう。