毎週いろいろな本を紹介させていただいてますが、なかなか紹介しにくい本もあります。それは、その人の読書量や人生経験によって同じような感じで受け取れるかどうか微妙なタイプの本になります。今回紹介する本もその類いに含まれると思っています。僕の中ではこれからの時代のキープレイヤーが必要なポイントが書かれている良書だと思いますが「万能薬」ではありません。そういう前提でお付き合いください。

今週もBookbiz Wednesday担当の大塚が案内します。


"プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動" (佐々木 直彦)

■創りだすこと、変化を起こすこと

仕事柄、いろいろな会社の方々と一緒に仕事をしていますが、どの会社のどんなプロジェクトも「答えがない」中で答えを見つけるプロジェクトが大多数を占めている気がします。過去の経験や前例を元に「答え」があって、その「答え」を解く方法論をタスクとしてこなせばいい、というものはあまり存在しません。それよりも、仮説/検証を繰り返しながら小さな答えを導き出し、その積み重ねから実績を作っていくことを要求されます。さらに悠長な時間を与えられず、限りなく短時間でその答えと答えの正当性を求められます。そのため、各プロジェクトは社内の人だけで完成することは皆無に等しく、プロジェクト単位で外部の人たちを巻き込みながら短時間で高クオリティなアウトプットが必要になります。そんな時に必要なスキルセットが本書のメインテーマである『プロデュース能力』だと思っています。

一般的には「プロデュース」や「プロデューサ」という言葉は映画やTVなどの制作分野で使われている言葉だと思いますが(最近ではWebの世界でも多く使われていますね)、「新しいビジネスを創る」という視点で考えればプロジェクトのリーダーは「プロデューサ」と言えなくもないでしょう。実際に結果を出し、納期と予算を管理するという意味でもほぼ同じ立場だと思います。本書の言葉を借りれば、

一つのビジョンのもとに、人々の力を借りて「新しい何かを」を創りだし、現状を変えるとこと

それがプロデュースである。

と表現しています。そして原点に流れる思想は、まず「個」がある。そして、「個」が集まって新しいものを創りだす、ここをマネージメントする能力が『プロデュース能力』ということになります。だから、リーダーシップも問題解決能力もプレゼンテーションも『プロデュース能力』を満たす要素として取り上げられています。

■ストーリーがスタートライン

本書のコア部分は第二章の「プロデュース思考」だと思っています。第一章では各分野でのプロデューサの例が紹介されていて、それが助走になっている。「プロデュース思考」の最初のテーマはビジョンを描くためのストーリー作りが丁寧に綴られています。このストーリー如何でプロジェクトは人を引きつける魅力を持つことができるか、自分自身のモチベーション維持ができるかに繋がっていきます。そのため、ロジカルで正しいかどうかではなく、「情→理」に訴えられるかどうかが重要と整理されています。著者の言葉を借りれば、

プロデュースは、自分で考え抜いて、自分で動いてみて、人と出会って化学反応を起こしてはじめて、実現できるものなのである。

と。だからこそ、自分自身も周りの人も諦めずに継続できる(原点回帰できる)ためにストーリーは重要になってくる。その先をどうすればいいかは、本書を読んで自分自身の目で確かめてください。

■最後に

本書は着眼大局着手小局な内容になっており、構成も含めてかなりレベルが高い作品になっていると思います。僕がもう一つ付け加えるとすれば、もっとベーシックな部分で大事な『好奇心』を常に持ち続けることかな、と思っています。『好奇心』というセンサーが何かに触れた時に思考のスイッチが入り、「プロデュース思考」のプロセスに入っていくのが普通だと思います。美味しいものを口にした時、素敵なサービスを受けた時にもう一歩踏み込んで「どうしてこれができるんだろう」と思えるかどうかが分かれ道な気がします。そして、「ありがとう」の言葉の後に、「ちょっと聞いてもいいですか?」ってひと言が言えたらきっと最初の化学反応がはじまりますね。