ここ最近読んだ小説以外の本ではダントツの一冊が今日紹介する『マニフェスト 本の未来』です。内容だけではなく、制作物としての「本」としても感慨深い作品だと思います。そして、最初に言っておきますが、この本の価値は間違いなく「電子書籍」の方か゛紙の本を上回っています。

3月に2回ほど電子書籍について書いていますが、この本の紹介をするために事前に書いた、と言っても過言ではありません。是非、Kindleで味わってみてください。

今週もBookbiz Wednesday担当の大塚がお届けします。


"マニフェスト 本の未来" (ヒュー・マクガイア, ブライアン・オレアリ, アンドリュー・サヴィカス, ライザ・デイリー, ローラ・ドーソン, カーク・ビリオーネ, クレイグ・モド, イーライ・ジェームズ, エリン・マッキーン)

 

■本値段は何で決まるのか

まず今日現在のamazonでのこの本のページを見てください。紙の本が¥2,940に対してKindle版は¥1,000です。戦略的にKindle版の方を安価にしているケースは多々ありますが、この作品はそういうレベルではありません。

 

次に原書である英語版をamazon.comで見てみると、日本語版よりも安くなっていますが、それでもPaperback版とKindle版の差は同じような感じです。ですが、英語でもよければここのサイトにいくと無料ですべてを読むことが可能です。残念ながら日本語のページはありませんが、英語を母国語とする人たち(あるいは英文をほぼ辞書なしで読める人)によっては無料から約$20までチョイスができる状態です。さあ、あなたはどれを選びますか?

 

これまで電子書籍の議論の中で、コンテンツつまり中身に対して価値(値段)を付けているわけだから電子書籍はもっと安価にすべき、って主張がありました(今でもあると思いますが)。この作品はコンテンツに価値を付けているのではなく、UXに価値を付けて世の中に問うていると思っています。どういうことかというと、無料で公開しているこのサイト自体が実験の場になっています。そして本そのものだけではなく、出版のプロセスそのものを実験していることが興味深い部分になります。つまり、本当にサイトのコンテンツは進化し続けていて(本として出版された後も)、電子書籍のランディングページであり、フィードバックを届ける場所でもあります。電子書籍はKindle版でリリースされているため、専用機のKindle PaperwhiteやKindle Fireだけでなく、iPhoneやiPadなどでも読むことができ、移動中はPaperwhiteで、ランチの時には手元のiPhoneで継続して読むことが可能です。実際に僕はそういう風にして読んでいました。

文章は基本的に論文形式なので、非常に多くのリンクが張られていてリンク先は必ずしも上のサイトとは限らず、また文章とも限りません。そんな時にはiPad版のアプリの方がキビキビとした動作であると共に、液晶でビジュアルなページを確認した方がいい場合もありました。そう、Kindleに提供されたコンテンツは進化中のコンテンツを「本」というパッケージに切り出して提供されたものであり、それが完成形ではない、というのがこれまでの「本」の概念と違います。

では紙の本はどういう位置づけか?僕自身、紙の本を購入もしていないし、読んでもいませんが、想像するには事典という立場が一番近い気がします。ちょうど「imidas」や「現代用語の基礎知識」のようなものと思ってもらうといいのではないでしょうか。

 

来週は中身に関して紹介しますね。